去年の８月に農業にカムバックしてから、だいぶ設備も整い、栽培に集中できるようになってきました。
そろそろ「どんな花を作りたいか」を考える時期にさしかかったみたいで、それについてよく考えます。
私ことそう花園は夏作としてひまわりを栽培していますが、以前の「草花園」も夏はひまわりを栽培していました。
当時（20年くらい前）はひまわりの新品種、茶色とか八重とか複色が種苗会社から続々出た時期でした。
ところが、品種によって生育の特性があまりにも違うため、たくさんの品種を作りこなせる生産者はいませんでした。
私はそこに目をつけて、各品種のデータを取り、18品種作ることができるようになりました。
今はどうか知りませんが、当時としてはオンリーワンだったと思います。
さて長いブランクを経てひまわりを作ることになって、どんな風にしたいか。前と同じようにやりたい？
去年、ある花好きの男性にうちで咲いたひまわりをあげたことがありました。
その人は妻子持ちですが、奥さんはあまり花に興味がなく、その男性がいつも花を買って家に花を絶やさないようにしているそうです。
このような男性は私の知る限りかなりレアで、これはこれで興味深いのですが、本題からそれるので置いといて。
その家庭では普段は子供たちも花にはあまり興味を示さないそうですが、ひまわりを飾った日、子供たちが「きれいーかわいいー！元気が出る～！」と喜んだそうです。
別にうちのひまわりが特別だったからとかではなく、単にオレンジとか黄色がパッと咲いている姿が子供たちの気分を明るくした、ということなのかもしれませんが、私はこの話を聞いてとても嬉しかったです。
コロナ渦であまり外に連れて行ってもらえなくて少し沈んでいた子供たちの気持ちを明るくしたのかもしれません。
小さなエピソードですが、この一件は私の中でとても印象に残っています。
それ以来「花は弱っている人を元気づけるものでなければならない」と思うようになりました。
花の役割に対する感じ方は人それぞれだと思いますが、私はそう思います。
では人を元気づける花ってどんな花でしょうね？
元気に健康に育った花です。
これは花の種類とか品種とかの垣根を越えて、すべて共通で言えることだと思います。
イキイキとしたものを見た時、人は元気になるんです、きっと。
植物の元気で健康な状態とは？
ここから先は急に理系の話になるのでそういうの好きな人は読んでください。
人間が元気でいるためには、なによりもまず食事をきちんととることです。
特に重要なのは糖（＝炭水化物）です。
糖は食べ過ぎると太りますが、食べなければ生命を維持することができません。
糖は植物に含まれていて、特に含有量の多い米や小麦が主食になります。
植物に含まれている糖ですが、植物はそれをどこから持ってきてるかというと。
土の中の肥料、ではないんですよね。
植物が二酸化炭素を吸って酸素を吐き出すというのはみんな知ってると思います。
動物は逆に酸素を吸って二酸化炭素を吐き出しますね。
生物の授業が好きだった人ならもう少し掘り下げて、植物は
「水と二酸化炭素を、太陽光線のエネルギーを使って、糖と酸素に変える」
のを知ってると思います。
これが「光合成」です。
人間含めて動物は、
「糖と酸素から、エネルギーを取り出し、二酸化炭素と水に変える」
という植物とは逆の事をやっています。
これが「呼吸」です。
ざっくり言うと、植物は太陽のエネルギーを糖に蓄える、動物は糖からエネルギーを取り出す、というサイクルで回っています。
言い換えると、植物は光合成をし、動物は呼吸をしてます。
動物は糖を食べないと生きていけない、食べ物であるところの植物も太陽のエネルギーがなければ糖を作れない、とどのつまり地球上の生物は太陽エネルギーの恩恵で生きてるわけです。
飛躍するかもしれませんが結論。
「光合成を活発にしている植物は元気で健康」
花の色素も糖にいろいろな元素（土の中の肥料に由来する）が結びついてできたものです。
こう言うとどうしても肥料の方に目が行きがちですが、糖の生成量が少なかったら話にならんのです。
色素だけでなく、茎や葉、すべての部分に糖に由来する物質が使われています。
花が開くときにはエネルギーを使いますが、こいういうときには植物も呼吸をして糖からエネルギーを取り出します。
糖をいかにたくさん蓄えているか、ということです。
詩的な表現をするなら「太陽の恵みをいかにギュッと蓄えているか」でしょうか。
野菜や果物も同じです。
果肉の充実度も色も甘さも糖の量に由来します。
さて、では元気で健康な花を育てるには実際のところ畑で何をしたらいいんでしょうか。
それについては今模索中です。
経験則ですが農業の場合、その生産者がどの点に注目しているかによってその人っぽさが出るという現象があります。
まあ他の仕事にも言えることかもしれないし当たり前と言えば当たり前ですが。
今この畑の植物は元気か？
そこに注目していきたいと思います。
だれかを元気にできたらいいなあ。
